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「目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった」  二週間前、約十五年ぶりに会った高校時代の同級生・みなとは、人もまばらなカフェの片隅で、主人公のミサキに向かって今日で3回目になる話を繰り返した。  だからと言って、彼の話は現実に起こった出来事ではない。ある日目覚めると高校の屋外階段の踊り場に居て、一日だけ学生生活をやり直した場合、というただの妄想話だ。そんなどうでもいい話を、彼は会う度にミサキへ語る。無駄話に付き合う時間は無いと突っぱねたいのに、二週間のあいだに3回も同じ話を聞いてしまったのは、気持ち悪いほど偶然が重なって彼と顔を合わしてしまったからだ。この十五年間、一度も会ったことは無かったというのに。  みなとの妄想は特別突飛な話ではない。けれど話の要所要所に、ミサキしか知らないはずの出来事を口にしてくるから、つい話を聞いてしまう。  高校生活の中で、誰にも言わずに卒業をしてしまったことを、みなとはまるで見てきたかのように語る。  話を聞いているうちに、もしかしてみなとの話はただの妄想ではなくて、過去にミサキの行動をどこかで見ていて、それを突き付けているのかと疑いはじめる。  そして、みなとと5回目に会った日、ミサキは意を決して「あなた、あの時のことを見ていたの?」と聞けば「ようやく思い出したんだ」とみなとは笑って、そのままカフェを出て行った。 登場人物 ミサキ(主人公)27歳の金融業界で働くごく普通のOL。みなとに会うまで、高校時代の出来事などほとんど思い出すこともなかった。 みなと(男)27歳。ミサキとは高校の同級生。偶然道端でミサキを見つけ、お茶を飲みながら昔話をし、その延長で屋外階段で目覚めた場合の妄想を語る。
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