0人が本棚に入れています
本棚に追加
目が覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった―。
達哉は後頭部に鈍い痛みを感じていた。昨日の出来事を思い出そうとするも痛みに遮られ、何一つ思い出せないままだった。
ここが一体どこなのか、なぜここにいるのかはわからなかったが、足元には血の付いた小さな消火器。それは、自分が誰かに襲われたことを証明していた。
助けを呼ぼうとスマホを探すも、転倒した際に故障してしまったのか電源がつかない。とりあえず、出口へと向かうため痛みに顔を歪めながら起き上がるのだった。
廃墟と化した古い雑居ビルには、エレベーターもなく、1階へ降りるだけでもかなりの時間を要し、目覚めたときに感じていた早朝の空気感は、すでに昼のものへと変わり始めていた。
人気がなく静まり返っている街。いつの間にか、達哉はふたたび意識を失い、路上へと倒れ込んでしまうのだった。
そして、次に目が覚めたとき、どこだかわからないが病院にいることだけは理解できた。幸いなことに、数少ない通行者が通報してくれたのだという。
すると、ベッドの横には、荒井翔太と名乗るいかにも新人刑事らしい男性が座っていた。荒井は、昨日のことや身に覚えがないかなど、簡単な事情聴取を始めることに。
一通り話を聞いた荒井は、達哉の見た目からして、不良グループに所属するようなタイプではないこともあり、通り魔的な強盗の線で考えていた。
その後、達哉のわずかな証言をもとに聞き込み調査を開始するも、ことごとく虚偽であることが発覚。困惑する荒井だったが、実は達哉は子どもの頃から虚言癖があったのだ。
そのことを知らない荒井は、虚実入り混じった達哉の証言から真実を導き出すことができるのか。一方の達哉は、断片的な記憶の中から自分が襲われた理由を知ることができるのか。荒井と達哉はそれぞれの目線から事件の解明へと乗り出すことになる……。
最初のコメントを投稿しよう!