0人が本棚に入れています
本棚に追加
老人の渡辺が階段の踊り場で目覚めた。頼る人もいない貧乏な老人である渡辺は、強盗をはたらいて逃げていたのだ。力尽き眠っていたが、逃亡したことを思い出し再び階段をのぼりはじめる。
ふと下の階をのぞきこみ、追手が来ていないかを確認する。すると、下の階にいた警察官と目があってしまった。警察官が追ってくる。階段を急いでのぼりながら逃げる老人。しかし、足腰につらいのぼり階段。途中の階で扉を発見するも外からは開かない。仕方なくのぼって逃げる老人。
警官の上村も老人だった。上村は年老いていて体力が衰えておりリストラ候補だった。ギャンブルで金を失っていて、リストラされるわけにはいかない。だから必死で犯人を追うが、のぼり階段がきつく、なかなか追いつけない。
ともに老人なので、間隔が狭まったりまた開いたりを繰り返す。警官が応援を要請するも、リストラ候補に与えられる無線は古く壊れており、使い慣れないスマホの電源は切れていた。延々と階段をのぼる追いかけっこを続ける2人。屋上につく頃には夕方になっていた。夕陽を見ながら屋上で力尽き座り込む老人、渡辺。息絶え絶えに追いつく警官、上村。すると、若い刑事の小林がビルの屋内から出てきた。
「ビルの構造を把握しておいて下さい。監視カメラを見て、犯人の位置を特定して。スマホの電源も気にして下さい」涼しい顔で冷静に説教する若い刑事、小林。汗だくでフラフラな状態で説教される老人警官、上村。小林は冷静に満身創痍の渡辺に近づいていく。
「なんだお前は!お前なんかに捕まりたくねえ!俺は一生懸命階段のぼってきたこの人になら捕まえられてもいい!」
渡辺はそう叫んで、抵抗した。あきれる小林。驚く上村。
上村に対し、両手を差し出す渡辺。上村は泣いて喜んで渡辺に手錠をかけた。渡辺は逮捕されたが、上村との間に友情が芽生えた。
最初のコメントを投稿しよう!