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階段の踊り場で目覚めた少年、進。自分がなぜこんな場所にいるのか思い出せない。あたりは夜で暗い。雨がひどく降っており、周囲の風景もよく見えない。今が何時かも分からず不安になる。進は下の階へ降りようと試みた。しかし、なんと下の階段は途中から水びたしになっており、先に進めない。
進は、水びたしの階段を見て、大雨が降り洪水がおきたことを思い出した。無我夢中で逃げて、このビルの屋外階段を駆け上ってきたのだ。進は踊り場まで戻り、踊り場の扉からビルの中に入ろうとするが、外からドアは開かない。不安になり、人を大声で人を呼ぶも誰も来ない。
進という名前なのに、自分はどこにも勧めないのかと絶望を感じる少年。しかし少年は人を探して階段をのぼる。雨がずっと降り続いており、風も強い。階段も滑っていて危ない。小さい体格の進は今にも風に吹き飛ばされそうだ。階段は妙に長く、のぼってものぼっても先が見えてこない。少年は不安になりながらも、なおも階段をのぼっていく。
屋上に着く頃には雨がやみ、うっすらと景色が見えてきた。屋上には数十人の人がいた。いずれも洪水から非難してきた人々だった。少年が無我夢中でたどり着いた屋外階段は、普段は全く使われていない公民館の裏口階段だったのだ。少年は、屋上に避難していた人々の群れの中に自分の家族を見つけた。
「良かった。無事で」そう言って少年の母親と姉と父親は再会を喜んだ。雨がやみ、空は晴れて朝焼けが射していた。
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