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焼き肉屋に移動すると、学君は成人男性三人でも食べきれるのか疑問を持つほどの肉を注文した。
最近食欲の無かった俺にとっては多すぎるほどの量を皿に盛られて、
「大ちゃんしっかり食べないと。もう一人の体じゃないんだからー」
学君が言った瞬間、口に入っていた食べ物を吹き出しそうになった。
「何を…えっ…?」
思わず香坂さんの顔を見ると気まずそうにしていて、変な空気のままお互い顔を見合わせてしまう。
「またまた!俺にはしらばっくれないでいいよ。上手くいったんだろ?兄貴たち」
焼きあがったハラミを口の中に放り込みながら学君はニッコリ笑った。
「まぁな」
冷静さを取り戻した香坂さんは、ひたすら肉を焼く。
「良かったね!一目惚れした大ちゃんをやっと手に入れられて」
一目惚れって!
「もう喋るな、お前は」
「いいじゃん!ねー、大ちゃん。兄貴と初めて会った時の事覚えてる?」
「初めて?香坂さんの会社に契約をもらいに行った時のことかな?」
学君は大げさに首を横に振って、
「違う違う。大ちゃんと兄貴、ついでに俺は一年以上前に会ってんだよ?」
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