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「そんな不安そうな顔しなくて平気だよ?
大ちゃんの住んでた寮から近い場所にある兄貴の会社って分かる?」
「うん、分かるよ」
契約をもらいに行った所だな。それより学君は俺の会社の寮の場所まで知ってるのか?
すると今度は香坂さんが話し始め、
「ビルの前に何本か桜の木があるんだが、そこで深夜に大介が地面に座り込んでスマホで何枚も何枚も花の写真を撮ってた」
「えぇ!?俺何してたんだ…」
「あははは、そうそう!丁度兄貴と会社の玄関から出てきたら地面に座ってんだもん!ちょっと変な人だったらヤバいと思って俺はそのまま離れようとしたらさー、今度は寝転がって写真撮り始めて!」
聞いてるだけで顔から火が出そうになった。いい年した大人がやることじゃないよな…
「さすがに夜遅くても人通りはあるし、放っておけないから俺が声をかけたんだけど…」
何故か香坂さんが言いにくそうにしている。
「それで俺はどうしたんですか?」
聞くのが少し恐い気もするが思い切って聞いてみた。
「抱きついてキスしてきた」
……えっ?
俺が!?
思いっきり目を見開いて声も出せずに呆気に取られた。
まさか!
「嘘だよ」
クスクス学君と二人で笑い合っている香坂さんは何だか意地悪だと思った。
「…もういいです」
少し怒ったように言うと、
「悪かった。けど声をかけたら抱きついてきたのは本当。言った言葉が"俺とお花見しませんか?"だったけどな」
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