159人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、」
「今日は〜、会社のお花見でした。ブワーって咲いて綺麗だったのです」
キラキラした目で、いかに満開の桜が美しかったのかを訴えてくる。
「ここは木が少ない〜」
「まあ、街頭だからな」
眠いのか頭をフラフラさせながら俺にしがみつく。
「えっ、兄貴何拾ってんの?」
「花見がしたい青年だ」
「はっ?」
学もしゃがみ、側に置いてあった持ち物らしき鞄を持つと、
「こんな所で転がってたら置き引きにあっちゃうよ。とりあえずベンチに座らせよ?」
「そうだな、立てるか?」
「うーん」
握られていた腕を解き、今度は俺が支える。足元が覚束なく、ユラユラ寄りかかってきた。
「…いい匂いがする。悪いイケメンの匂い」
「悪いイケメンの匂いって⁉︎兄貴何を醸し出してんの」
ギャハハハ笑う学に、クンクン首元を嗅いでくる男。
「いいから、ベンチまで歩け」
「俺の名前は〜、里中大介です。大ちゃんとお呼びください」
「くっ、大ちゃんだって!大ちゃんのお家はどこ?」
「あっちー」
大通りを一本挟んだ方向を示す。
最初のコメントを投稿しよう!