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「....最近暇だわねぇ」
道具屋の女店主が店のウインドウから表の商店街を行き交う客の少なさに愚痴をこぼしている。
ここは世界中から暗黒大陸と恐れられるカルラーム大陸にある首都ボルンの隣町のリゾート村である。
海辺の風光明媚な観光地なのだが、現在の季節は冬なので海水浴やキャンプ場に来る客は少ない。
女店主の名前はリリアン・ローズと言う。
つい最近、父親のハルク・ローズが隣の大陸に支店を建てる計画でそちらの店舗展開に力を注いで色々な場所に奔走しており、本店の営業は現在リリアンに任されている。
「そうですな、シーズン外ですからねぇ。」
そう答えたのは店の帳簿をチェックしているドルトン・セバスだ。
以前はデップリと太った典型的なオーク(豚のモンスター)だったのだが、最近はシェイプアップに成功しタキシードとシルクハットが似合う執事へとジョブチェンジしていた。
冬場のリゾート地が観光面でどうしても寂れるのは致し方なく、ローズ亭はこういう時期を利用して地方へ行商兼冒険の旅に出掛けるのか普通だった。
実際、リリアンの幼少期のオフシーズンズにはハルクと共にカルラーム大陸の各地方を訪れており、その地道な活動で各地の道具屋と提携し商品のやりとりを行っている。
そして今年は隣の大陸であるシルエイティに支店を出そうと計画している。
そのシルエイティ大陸には基本的に魔法を使う人間が極端に少ない。
カルラーム大陸の場合は半数以上の住民は魔力が備わっており、その魔力を利用して鉄道や乗り合いバス等の公共交通機関が発達している。
工業や建築の分野も言わずもがなだが、シルエイティ大陸はそれらのインフラには期待が出来ない。
移動は徒歩か動物を使い、猛獣やモンスターには基本的に剣で戦いながら数少ない魔法使いが援護するコテコテのファンタジーワールドだ。
決してそこらの爺さんが昔取った杵柄で害獣を指先一つで消すような事は無いだろう。
「よお!リリアン君元気にしとるかね?」
ローズ亭に指先一つで害獣どころか世界を消しかねない人物が訪問してきた。
カルラーム大陸首都ボルン国の国王にして世界を恐怖に陥れると噂される魔王のジーニアス王であった。
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