第一章 リリアンはじめてのおつかい

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「....教官、またサボりですか?」 ジーニアス王はリリアンが魔法学校に通っていた頃の担当教官なので国王とは呼ばずに教官と呼ぶ。 ボルン魔法学校は魔法に関する取り扱いを教える世界で唯一の学校であり、 カルラーム大陸以外からの入学生も多く、卒業生は冒険者の魔法使い以外にも各地方の国の宮廷魔術師や政府の要人の子供を預る事も多い。 また、一般市民にもライター代わりに使えるファイアから土木作業にも便利な魔法も教える。 その魔法学校の校長は国王がつとめる。 つまりリリアンの目の前にいる人物だ。 「だって、書類実務ばかりで疲れるんじゃもん。それに最近はボルン大洞穴最下層に来る冒険者が増えて、その度にいちいち魔王になって冒険者を殺らないとならんしのぉ。 リリアン君が魔王を継いでくれたら助かるんじゃがのぉ。」 ジーニアスは暇があればリリアンを魔王になれとスカウトに来る。 だがリリアンは吉良吉影さんばりに静かに暮らしたいタイプなので魔王になるなんて論外である。 魔王という存在の実状を知ってる人物はリリアン以外には極少数しか知られていない。 更にモンスターを斜め上からの視点でやっつける悪知恵や知らないシステムでもすぐに順応する性格でとても魔王向きだったりする。 だが、カルラーム大陸における魔王とはボルン大洞穴と言う名前のアトラクションの管理人に過ぎないとリリアンは思っている。 そんな穴蔵生活はゴメンだ。 「じゃが今回はスカウトじゃなくて、国王としてローズ亭に依頼をするつもりで訪れたのじゃ。」 「そういう依頼は政務官の役目じゃないんですか?」 「いやほら、それはそれ これはこれってやつじゃよ。」 サボり確定である。 「最近シルエイティで不穏な動きがあってのぉ。 比較的懇意にしているシルエイティ大陸のシシド王と連絡が取れない状態なんじゃよ。 丁度ローズ亭がシシド国に支店を出すと聞いてな?何か知らないかと思って来てみたんじゃ。」 シシド国に問題があるとは父親のハルクから聞いた事が無い。 そこでローズ亭の通信機でシシド国のハルクに連絡をしてみるリリアンだが、確かに通信が繋がらない。 魔力を通信機に流して魔力の波で会話する魔導機械なので、魔力の薄いシルエイティでは時々使えなくなることもある。
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