第一章 リリアンはじめてのおつかい

6/22
前へ
/22ページ
次へ
後日、リリアンとドルトンはジーニアス国王からの正式な依頼でシルエイティ大陸へと向かう事に決まった。 ボルン城の謁見の間にてリリアンは国王の椅子に座るジーニアスの眼前に膝間付いてかしこまる。 謁見の間は非常にゴージャスな造りになっており、海外の訪問者や叙勲式など公式な行事に使う部屋である。 国王が王座に着席すると、両端の壁際には数十人の大臣達が偉そうに中央絨毯に膝間付くリリアンを偉そうに睨んでいた。 「ローズ亭の代表リリアンよ、お主にボルン国代表としてシルエイティ大陸シシド国のシシド王へ訪問を命ず。 そしてお主の身の証として、このブルークリスタルロッドを貸与する。」 (うわっ出た~。久しぶりの杖だ~。) ちなみに過去にリリアンがブルークリスタルロッドを盗んで指名手配されていた思い出がある。 最終的には盗んだのではなく、国王の密命でボルン大洞穴へと行ってた事になり、杖を国王に返却した後で咎め無しとなった。 実はブルークリスタルロッドは名目上ボルン国の国宝なので国に杖を返却してはいるが、ブルークリスタルロッドの実質的に正式な使い手はリリアンなので、国宝の貸与式とはリリアンに杖を返却する為だけの形だけ儀式なのであった。 「拝借致します。」 それだけを告げてリリアンは国王からブルークリスタルロッドを受け取った。 (やあ!リリアン久しぶりですね。元気にしてましたか?) ブルークリスタルロッドからリリアンだけに聞こえる声でリリアンに挨拶してきた。 (ちょっ!勇者じゃん。あんたまだ成仏してなかったの?なんなら死体集めて蘇生しようか?) (いやぁ、アンデッドになるくらいならこのままがいいかな。) ブルークリスタルロッドの先端には宝珠が付いており、 勇者が魔王人形を倒した時に肉体が暴走した偽物魔王に乗っ取られ、勇者の魂はブルークリスタルロッドに収まってしまったのが、以前にリリアンが体験した冒険の顛末だ。 リリアンと勇者の会話は本人同士でしか通じてないので、事情を知らない大臣達の盛大な拍手をもって貸与式は無事に幕を閉じたのであった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加