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正式にボルン国を出発したリリアンとドルトンはボルン国の南にある港へと向かって歩いていた。
「以前に比べたら気楽な旅だわ。」
「そりゃお尋ね者の逃走者じゃ旅と言えませんからね。」
従者のドルトンが周囲を警戒しつつもリリアンに答えた。
数年前はリリアンの下僕と言う立場に喜んでいたドルトンであったが、ここ最近のドルトンのトレンドはやり手の執事らしく、リリアンに対して従うだけではなく注意もする。
魔法学校にも通って執事のイロハも学んでみたりもした。
そうなると最早オークというよりは別の生き物になっちゃっている様な気もするが。
「あんたも言うようになったわねぇ。まあ私としてはその方が接しやすいけどね。」
リリアンがドルトンに向けて笑顔を見せた。
そしてドルトンにはその笑顔が何よりの報酬なのであった。
シルエイティ大陸への定期便のある港へは徒歩で半日程かかる。
その間に色々と小物モンスターが出現するのだが..
「邪魔よ!」
大体の敵は蹴っ飛ばしていた。
リリアンの靴は、とある筋から入手したセラミック入りの軍隊シューズなので、いちいち短剣や魔法を使うくらいなら蹴った方が早い。
「脚力というのは腕力の3倍あるのよ。」
「私としましては手腕を発揮出来ないので、物足りませんな。」
そういうドルトンもセラミックシューズで小型モンスターを蹴り飛ばしている。
合理化こそ商人の心意気というものだ。
「ところで港町はどういった町なんですか?私はアビスとボルン周辺しか知らないものでして。」
ドルトンの行動範囲は地下世界アビスにある人間の街と魔法学校のある首都ボルンまでなので、外の国々の事には疎い。
「ちょっと昔は、カルラーム大陸は四つの国に別れていて、港町は元海賊王の治めていた街なのよ。
今もその名残で荒くれ者が多いわね。
商人的には絶好のカモ....じゃなくて上客なのよ。」
「ほほう!ならリリアン様の護衛の腕の見せ処ですな!」
張り切るドルトンに向かってリリアンがチッチッチと人指し指を振る。
「フッフッフ、そう思うでしよ?ところがどっこい、その港町は女性はとても安全なのよ。」
治安が悪いのに女性が安全と聞いて不思議な顔をするドルトン。
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