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銀は、その言葉にフンと鼻を鳴らした。
「そういうお前だって棘だらけだろうが!人の事言えんぞ?」
と、喧嘩とも取れない言葉が飛び交う。
何かきっかけがあったとしたらあの雪の日ほんの少しだけの、2人の空間にあったのかも知れない。
お互い言葉を交わしても苦痛と配慮を交えずに話が出来るのだ。
「はじめ...って呼んでいいか?」
「...やだ」
なんでだよ!と、がぁがぁ騒ぐ銀を見ていて楽しいのだろう。
社は薄く笑いまんざらでもなさそうな顔を見せる。
「お前はなぜ、俺の所に来たんだよ」
ひとしきり笑うと、社がベットにゴロリと転がり、銀を見る。
その今まで見た事の無いゆったりした姿もなんだか銀には、新鮮で思わず移動してベットへと腰掛けた。
「あー...助けた時?の、話聞きたくてな」
後ろで寝転がる社の前に腰掛けた銀が鼻の頭を掻きながら答えた。
「お前は知らんと言ったはずだが?」
社が答えれば、銀はうーんとひとつ唸ってから口を開く。
「知らない所でも俺が助けたんなら、やっぱり嬉しいし聞きてぇなと思ったんだよ」
「へぇ、人助けがしたいのか?」
「いや、そうじゃねぇけど、人は裏切るし平気で人を捨てられるんだ...そんな中で感謝してもらえたら、聞いて見たいと思うだろ?」
心情を吐露してまで聞きたいのだと社は理解したのだろう。
「そうだな」
同意の言葉を聞いて、銀は思わず嬉しさを隠さずに話をしようと振り返ろうとしたが、両手が銀の前に背後から伸びてきて動きを止めた。
「あ...」
ふわりと、優しい香りと温もりが背中に与えられ、銀の目の前で腕が自分を抱くように回された。
「そんなに知りたいか?」
耳元でそんな言葉を聞かされると、ムズ痒さに、銀がじたばたと暴れだした。
「知りたい...けど、重ぇよ!こら!はじめっ」
思わず叫べは、緩く抱き着いた腕に力が入り、身体はガッチリと固定され、もう片方の手が銀の頬をゆるりと撫でた。
「あー名前呼びダメだって言っただろー」
そう言って頬を摘んで引かれる。
「ふぉーひたひ、悪かったって!」
謝罪中に摘まれた頬は解放され、社はボフッと、ベットの上に再び寝転んだ。
「痛てーなー!学校でのクールイケメンが何すんだよ!」
頬を擦りながら銀が怒れば、寝転がった社がちらりと視線を頬に動かした。
「なんだよクールって...」
と、不貞腐れたように呟いてベットにうつ伏せてしまった。
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