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風呂場の扉を開けば脱衣場があり、4人程が服を置けるようにカゴがあった。
どれも空の様子で人は入っていないと社がカゴに借りた下着とバスタオルを入れた。
「慣れてんのな」
それを後ろで眺め、銀がボソリと言えば聞こえなかったのか制服を脱ぎながら、社が何か言ったかと、いうような顔で銀を見る。
「ん?」
「いや...」
そう言って銀が、手に持ってきたスエットの上下を渡した。
「お、パジャマ!」
社が嬉しそうに受け取りカゴへと入れて服を脱いでいく。
全裸に互いに戸惑いはなく、風呂の中へ行けば、2つしかない洗い場で並んで身体を洗った。
洗い場の後ろには、4人が入れる程の風呂。2人だとそこそこにのびのびと使えるなと言いながら湯船に浸かった。
「くぅあーっ!沁みるねぇー」
と、銀が風呂の口に両腕をかけて伸びているのに対して、社は隅でゆっくりとお湯を楽しむ様に入っていた。
「親父かよ」
社に突っ込まれて、銀がぶすりと、頬を膨らませ、水面をピシャリと叩くと跳ね上がった湯を見てニヤリと悪く笑う。
くるりと身体を社へ向けると、両手を握って、指の間から湯の水を噴出させ、その水の行方は言わずもかな社の肩へとかかる。
「やめっ!」
両手で目の前でガードしても銀の水鉄砲攻撃はやまない。
ピューと、次々に銀の手から放たれると、社が声を大きくする。
「杠やめろって!」
「じゃ、はじめって呼んでいいか?」
何故そんなに名前が呼びたいのか。
こだわりがある訳では無いので別にいいのだが、この理不尽に屈するのは性に合わないと、社が答える。
「やだよ!」
「だったら、銀ちゃんと呼んだら許してやんよ」
けけけと、不可思議な笑い声を発しながら、銀は更に足し水の蛇口を捻った。
「次はなまら(とても)冷てぇんだからな!?」
そう言って手の中に蛇口から出る冷水を貯めに掛かると流石に、社が負けを認めた。
「マジ、ひゃっこい(冷たい)のヤダからやめろって銀ちゃん銀ちゃん!これでいいだろ!」
銀はその言葉を満足そうに受けて、蛇口を閉じた。
「最初から、そう言えや」
くくくと、悪巧みが成功した子供のように笑った瞬間、パッ!と一気に中が闇に包まれ、銀はヤバイ!と社の腕を取った。
「なんだよ、なんで電気消えんだ?」
驚いた社が、銀に引かれながら聞けば銀はとりあえず早くと急かすばかりだった。
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