prologue

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髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜながら銀が聞く。 「お客様、いかがですか?」 毛根を揉むように聞いてくるので、社もその言葉に便乗する。 「もっと、ソフトが希望」 「へいへい、うるせぇ客だ」 と、美容師気取りで髪を乾かす銀に「なら聞くな」と、突っ込んでいるうちに、髪はすっかり乾燥した。 そして2人で寝るかと、ベットを見てその狭さにため息を付いたのは社か銀か。 はたまた、互いに同時に息を吐き出したかもしれない。 「ほら、(ゆずりは)が奥だろ?」 と、場所を譲られ銀もなんとも言えない顔でベットへ乗り上げる。 奥に座ると、社も同じようにベットへ座った。 「もう寝るのか?」 まだ時間にしたら9時過ぎである。 いくらなんでも早いだろうと銀が聞くのも当たり前だろう。 「あ?なんだよ話でもするか?」 社が辛辣に返すには理由があった。 早寝早起きの寺で住まう社には、その生活が当たり前なのだ。 「お前の寝る時間はだいたい何時だよ」 銀に聞かれて22時である「10時過ぎ」と社が答えた。 「早ぇよ...どんな健康生活だよ」 「寺だからな」 「なぁ、寺って朝も早いのか?」 そう言いながら銀が布団の中へと滑り込むと社も背を向けて入って来る。 仰向けでは、寝られない程のキツさに銀が枕を引いた。 「俺の枕ないが?」 ぽんぽんと枕元を叩くも真っ平らなシーツが手に触れるのみのベット。 「は?なんでやらんきゃならねぇの?」 と、がっちり枕を渡すまいと手でホールドした銀が言えば、フッと社が笑って銀の片腕をとった。 「...うん、ならいいこれを使う」 そう言って銀の腕を引き頭の下に敷いた社は、頭の位置を落ち着かせるために頭を移動させる。 「ちょ、使うとか俺の腕だろ!!!」 慌てて、ぎゃいぎゃいと言う銀を無視して社は身体をピッタリとくっつける。 「女の子とこういう事してんだろ?なら別にいいじゃん、枕ないと寝れないんだよ」 そう言って、クスッと余裕じみた返答を返す。 「野郎と、女は違うだろ!なんで男相手に腕枕しなくちゃならねぇんだよ!」 「ん?なら枕くれよ」 即答で返されて渋々と、腕を貸すことに納得をせざるを得なかった。 「あー...本当に髪柔けぇのな」 いつの間にか、銀の手が社の髪を梳く。 短いが、指先に触れる柔らかさは感じたのだろう。 クスッと笑う社を肩越しで見て、銀は顔を見たい欲求が生まれて振り向けと念じた。
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