prologue

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枕にされた腕を折り曲げて、社の髪を触る銀は、どうにか顔は見れないかと考えて話をする事に決めた。 「俺は、学校でもここの寮でも要らねえ存在だろ?なんでお前は俺に絡むんだよ...助けたっても大した事じゃねぇだろ?」 ただ、自分の方を見てもらいたいだけの話にしては重かったかと思った銀だったが、この答えにさらに銀は驚く事となった。 「俺は、あの日助けられてなければ、きっと学校に来ない位の出来事だったからな」 この、学校を休むこと無く来ていた男が、来なくなる程の大事なのかと驚愕した銀が背を向けて横になる社の肩を自分の方へと引いてしまった。 「は?どういう事だよ!」 そう言って、正面で顔を突き合わせると、銀はやはり社は綺麗な顔だよなと思った。 けれど今はそこではない。 「言葉のままだ...それに、お前に話したところで笑われて終わりだろうからな。 今はまだお前を完全に信用してる訳でもないから言わない」 そう言うとまた前を向いてしまった。 信用している訳でもないという言葉が嫌に銀の焦燥感を掻き回し、苦虫を噛んだような後味の悪さに社の背中に銀が額を付け、口を開いた。 「何かあれば呼べ...俺が、助ける。そしてお前が言えるようになったら絶対聞かせろ」 信用しろなど、どの口が言えるのか。 自分も人を信じていないのだからと、そんな事を考える銀が言える精一杯の言葉だった。 「...そうだな」 と、肯定の言葉を貰いホッと胸を撫で下ろした銀は社の身体を自分と密着するように引いた。 「ちょ、おい」 慌てて頭を浮かせて起き上がろうとする社の頭を銀の腕に収め、抱き着く格好になると「こうやっとけば落とさねぇんだよ」と引き寄せた理由を告げた。 「ふぅん...まぁ、暖かいからいいけど」 と、社もその温もりに目を閉じた。 元々早寝の社は互いの体温も手伝い、あっという間にすぅすぅと寝息を立て始めた。 銀も寝ようと思ったがどうも抱き着いてるのが男であり柔い身体ではない事に違和感を感じていた。 手の置き場も困りモゾモゾと位置替えを繰り返すもしっくりこなくて、社の腰のくびれに手を乗せた。 (細ぇ...) するりと手を動かせば腰のラインがはっきりと手で感じ取れる。 今まで抱きしめて寝てきた女とは違う男を自分は今守りたいと思っていて、その感覚がとても不思議でならない。 腕枕は嫌悪感も違和感もなく受け入れられる事に首をひねっていた。
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