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眠れないなと、銀はジッと社の整った顔を思い起こす。
そもそもに後ろを向かれているので、顔を覗き込むことは叶わない。
ふと、何に執着してるんだと気づいた時にそれは起こった。
社が寝返りをうったのだ。
狭い場所だという認識はあるらしく、とても上手く寝返って銀の目の前に、綺麗な顔が向けられた。
「っ...」
胸が高鳴り、なんとも言い難い気分が銀に襲い掛かる中で社は我関せずと言う様にスヤスヤと眠っていた。
整った顔は目を閉じても綺麗で、肌のキメの細さや、すっと通った鼻梁。
眉は手入れをしてるのか綺麗に整っていて、唇に視線が向かう。
ほんのり赤みを保った唇は、きっと深い口付けをしたら、艶やかに赤みを増すのだろうか。
そこまで思考して銀は、ハッとした。
相手は綺麗と言っても男であり恋愛の対象とは到底思えないと言う結果が目の前に急に現れたのだ。
「アホか俺は...こいつが変なこと言うからだな、うん、惚れるだのなんだのって意味のわからんことを言うから気になっただけだ」
まるで魅入っていた言い訳のような言葉を並べ、溜息をついた。
やはり、触りたいとは思ったものの、これ以上は銀にも良くない“なにか”があるのではと考えた様で目を閉じた。
のだが、数分も経たないうちに社が銀にピッタリと身体を寄せ、腕枕も肩の位置まで頭をずらされた。
なんら、今までの女と変わらない重み。
ただ体の硬さはあるが、それだけではないのか。
「社っ、近けぇよ」
声を掛けてみるも、んー...と寝ぼけて更に密着されてしまう。
うーんとひとつ頭をひねり、ニヤリと銀が含み笑う。
「はじめ、抱かれてぇの?」
低く発された言葉だったが、眠る社には全く届かずくくくと、銀が笑う。
何をとち狂ったのだと銀は自分に言い聞かせ社を優しく抱き込んだ。
「寝よ」
一頻り笑って、寝る決断をした。
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朝目覚めると、銀は辺りを見回し苦笑いを零した。
机の上に綺麗に畳まれた、社が着ていたスエットだけが置かれ後は置き手紙も何も無い。
「あいつ、パンツ忘れやがった...」
銀の洗濯物の中に、自分では履かない真っ黒なボクサーパンツが、乗っていたのだ。
時間を見やればまだ、7時前で社の下着ごと洗濯室へ持って行き乾燥までさせて、朝食を食べに向かった。
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