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学校に到着すると、社は靴を履き替えて教室へと向かう。
無愛想でもイケメンで、口数が少なく、性格や言葉がきつくても同級生でなければ憧れの的である。
その社が、教室へ向かう道のりは、黄色の声が飛び交う。
それも全てを無視して教室に入ると既に銀が机に覆い被さるように眠っていた。
「よぅ...」
一応先に帰った事に罪悪感でもあるのか、小さな声を掛けた社を目だけを開けて銀が見る。
挨拶の声も出すのが億劫なのだろう。
机の外に出ていた手だけを上げて振る様がどう映ったのだろうか。
社が机にカバンを置くと、椅子を引いて横に腰掛け、横座りで前を見れば登校している数人が、数カ所に固まって話をしていた。
そのクラスメイトが社を見るなりおはようと声を掛ける。
「おはよう」
そうあっさり返すと、銀の頭をガシッと掴んでわしゃわしゃと掻き混ぜる。
「ちょ、おい」
「名前で呼んだ罰な」
フッと笑う社に、流石の銀も顔を持ち上げてポカンとする。
「おまっ!寝たフリかよ!」
滅多に騒がない社が騒いでいる中にいるのが不思議なのか。
はたまた、いつも怒声を上げたりしている銀が社と話している事自体に驚いているのか。
クラスにいた人全てが2人を驚いた表情で見ているのにいたたまれなくなったのかは定かではないが、銀が再び机に突っ伏した。
その様子を確認してから、椅子にちゃんと座り直すと後ろから背中をつんつんと指されて、社が振り向きもせずに「なんだ」と返す。
「顔に傷...誰にやられた?引っかき傷だから女だろ」
「あぁ、女だな」
母にされたのだ、間違いなく性別は女だとでも思ったのか社が肩を震わせて、笑いを堪えながら答えた。
「クラスは?」
「女には手をあげないんだろ?」
くくくっと笑いながら社が答えれば、銀が頬を膨らませて背中をつんつん突っつく。
「お前の顔に傷付くのは...なんかヤダ」
「ぶっ...なんだよそれ」
教科書を机に出して、社も振り向かないままに話を続ける。
「手はあげなくても注意は出来んだろ!」
「残念ながら、この学校にいる女じゃねぇよ」
そう答えたら、背後から掛かる言葉の応酬がピタリと止まった。
何を思ったかはわからないが舌打ちをひとつ鳴らして怠そうに机に伏した。
社もそれに返事は返さず、タイミング良くチャイムが鳴った。
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