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学校で、授業が始まると銀はすぐに寝てしまうことが多いのだが、椅子に浅く尻を乗せて両足両手は机の前に投げ出している。
姿勢の正しい社には何ら被害はないであろうが、見ている周りの目には良くは映らないだろう。
「昼、一緒に食う?」
「アホかお前は...授業中だぞ」
そう言って、社がノートでポコりと銀の頭を叩き、銀もノートを睨み付けると、ニヤリと笑った。
「おぅけぇーい」
そう告げて、机に寝そべる。
結局昼までは起きもせずに、眠る銀。
そしてその前で社がノートに消しゴムをかけていた。
“たべる”
と、ひらがなで書かれた文字がゆっくりと消されていった。
昼を知らせるチャイムが響けば、いつもの如く銀と昼を食べようと女子がドアを開く。
「銀っ!」
高めの声に社の頬の傷がジリっと痛みを与えたのだろうか?
スリッと頬を撫でて、ため息を落とし弁当をもって立ち上がろうとした時だった。
「あ、今日は他の奴と食うから」
その言葉に、ニコニコしていた女子の顔が急に蒼白になって行った。
「えっ、今まで私だったのに飽きたの?」
「は?」
銀は、その女子の言葉に首をかしげた。
確かに今までは、来たのがこの女子だけだったから銀も拒むことは無かったがなぜそんな言葉を投げかけられるのかと、少々不合理な表情を見せた。
「だって、今まで断らなかった!」
食い下がる女子に先に嫌気をさしたのは当事者ではなく社。
椅子を押して立ち上がると、弁当を持って〝ごゆっくり〟と告げて立ち去ろうとしていた。
「おい!社!」
銀も待ってくれの意味を込めて呼び止めるも、社は足どころか手さえ止めずにドアを開き教室を出て行ってしまった。
「あんの、マイペース野郎!」
と、置いて行かれた事に憤怒すれば女子も同じように食事を断られた怒りをぶつける。
「誰と食べるの!?」
ダン!と、少し大きめな音を立てて机に両手を付き、傍から見ればまるで尋問の様でもあった。
「は?お前になんで言わなきゃなんねぇの?」
まるで意味がわからないといった風に、首を傾げながら答えると、突然女子がドンと中の弁当が崩れるのではないかと思える強さで、机の上に置くと息を吸い込んだ。
「作ってきてるからよ!」
さも、自分が言ってる事が正しく当たり前だと言うように女子が答え、その言葉に銀が眉を顰めた。
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