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女子の怒りを何とも感じないのか、銀はため息と共に席を立った。
「要らねえって言ってるよな?それでも持って来るから勿体ねえって食ってるに過ぎないんだがな。
それを 作って来てるんだから食え って言うのは随分勝手じゃねぇ?」
言葉通り、女子が作って来ているのは銀の了承を得ていなく、更に他の女子を寄せ付けない様に威嚇していたのだ。
「付き合ってもねぇのに、それはねぇんじゃねぇの?それと、俺が他の奴と遊んだから飽きる...とか、全く意味わかんねぇんだけど」
銀の冷たい一言が女子に降り注いだ。
その場で固まった女子の肩をポンと叩くと、他の奴にでもやれば?と更に言葉の追い討ちを掛けてその場を去った。
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銀は、生徒会室のドアに手を掛けてスライドさせようとしたが、鍵が掛かっているようで開かない事に舌打ちをし、ドン!と強く扉を叩いた。
「社!いるんだろ!?なぁ、はじめ!」
声を掛けても返事もなければ人の気配もないし、曇窓の向こうには制服の黒い影すら見えず踵を返した。
段々上がってくる息を、治める事もせずただ、社を探す。
1度教室に戻ったが、社は戻ってないと食事中の女子に聞いて、行っていない場所を探し始める。
ジワリと滲む汗と、荒くなる呼吸。
なぜこんなに必死なのか、銀自身もわからなかった。
校庭、生徒会室、教室、全て回る頃には疲れて、緩めた膝に手を置きハアハアと息を整える。
目の前には階段があり、登って行けばまだ冷たい風が、銀の熱くなった身体の熱を奪って行く。
「ここかよ」
きょろりと見回し足先が見えて覗き込めば、社が床に座り階段のある壁を背中にして座っていた。
右手には箸、左手には食べ掛けの弁当。
「なんだ、もう用事は終わったのか」
そう言いながら、ぱくりとゴマが降り掛かった白米を口に運ぶ。
「座っていいか?」
日当たりが良く、風がなければ暖かいのだが、北海道は強風が多いせいか、この日も少し寒さが身を刺していた。
「勝手にどうぞ」
「冷てぇな」
頬を膨らませた銀は、社の横に座ると前髪が風に揺れる。
「ギシギシの髪でも靡くんだな」
と、やりとってると社はジッと銀を見た。
「なんだよ?」
「飯は?」
「...まぁ、食えんかったな、購買もあっちゅう間だしな」
と、笑った銀に社は持っていた弁当を前に差し出した。
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