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ベットに眠る社はやはり整った顔で、寝姿も綺麗だなと銀は笑った。布団を掛けてやれば、銀の枕をいつの間にか自分の頭の下に引き込んでいる姿も微笑ましいのだろう。
「ホントこいつ、綺麗なんだよな...」
座っていた椅子を離れて、眠る社の横に腰を下ろした。サラリと黒髪を撫でれば、サラサラな髪が指の隙間から零れて行くのを思わず掴んでしまってハッと目を見開いた。
自分の取った行動がわからないかのように掌を見て苦笑いを漏らす。自分自身の行動は確実に社へと向ける思いがある様に本人も感じ取ったのかもしれない。
けれどもそれがどんな思いなのかを今は気付けないでいた。
布団に潜り込んで、社の温まった身体を抱き込めば銀も目を閉じて眠る。何があったのか、どうして自分の所に来たのか。
いや、そんな事より自分を頼ってくれたのが素直に嬉しいと感じた。
朝早く、身体が揺すられて銀は意識を戻そうと思う。けれど眠気に負けて微睡むうちにまた、意識が遠のく。
「起きれって」
「んー」
あー社の声だななんて思ってるのか顔は二ヘラと歪んで揺さぶる手を取り、ベットに引き込んだ。
「ちょ、うわ」
強い衝撃と腕の中に帰ってきた温もりに、銀は再び眠ろうと頭を社の首筋に埋めて顔を左右に振った。その擽ったさに身を竦める。
「ちょ、やめっ...んっ」
その漏れ出た吐息のような甘ったるい声に、ゆっくり瞼を開き目の前にある首筋をペロリと舐めると、また甘い声が聞こえ思わず銀は手を身体に這わせた。
「ん、あったけぇ...」
銀がそう漏らしながらも身体を、さするように撫でたところで、頭に強い衝撃を受けた。
「痛てぇな!」
急な痛みに喧嘩をしていた時の事が、蘇り睨み付けたら相手も、ギロりと睨んできた。
「...あ」
やっと誰に叩かれたのかが理解出来たのだろう。ポカンとしていてまだ寝起きの、覚醒前であろう銀をもう一度頭を叩いてやる。ごちん、と音を鳴らして衝撃を頭に受けた銀だったが未だ呆けたままだった。
「お前と寝る可愛い女じゃ無くて悪かったな!」
と、警戒心を前面に出して身体を引いている社を見て、ふわりと笑うと抱きついた。
「え、ちょ、杠」
「あぁ、はじめが可愛い」
思った事を口にしたのだろうが、その言葉は社には嬉しい事ではなかったようで再び叩かれることとなった。
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