桔梗(ききょう)

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そんなやり取りはまるで兄弟か家族であるよう。だが当の本人は、全くその事について考えようとはしなかった。 「社君」 そう呼んだのは、前にも告白をして断れていた女子。弓を磨く手を止めて社が、そしてその後ろから銀が彼女を見た。 「ねぇなんでその不良がここにいるの?」 「...んー?なんでいんの?」 首を傾げてわからないと言った風に社が銀を見たら銀がうーんと考える。どうやら互いになぜいるのかを認識していない様だった。 「なんでって、邪魔してるわけじゃねぇしいいじゃん、はじめ見てるだけだ」 口を尖らせ気になる人を見て何が悪いと訴えれば彼女は社の横に座り腕をとった。 「あんな不良の奴より私の方がいいに決まってます!そして、私もはじめさんって呼びたい!呼んでいいですよね?」 と、グイグイ身体を押し付けてくる。その身体を押し戻そうとする前に背後から抱き締められて社の身体は銀に包まれた。 「はじめは、やらんし、名前で呼ぶのも俺でさえ苦労したんだ!お前は無理!何が無理って俺が無理、耳が無理!」 「...無理無理うるさいな」 背後から攫うように抱き締められた社がポロリと漏らせば、さらに強く抱き込まれた。 「俺ははじめより綺麗な女じゃないと、渡したくねえ! 」 子供じみた言いように、苦笑いを零す社だったが、その言葉に彼女は青ざめて1歩引くように体をそらす。 「何、ホモなの?」 そう言葉にされて、社が首を傾げてしまう。そして、少し間を置き言葉は放たれた。 「ホモか、うん、俺はホモかもな」 銀に向けられた言葉を、社が受けて答えてしまったのだ。ざわり...と部員達が驚いている中、社は何も無かったように銀を見る。 「なぁ、俺はホモ?」 「...え?知らねえよ!でもホモなら俺が貰ってやる」 またザワザワと部室が騒がしくなった。 銀と社の発言で、ザワつく中先生が入ってきたために話はそこで途切れてしまった。 弓をキリキリと引き、手を離す瞬間の社は洗練されていて、内から湧き出るような美しさを持っていると銀は胡座をかいた足の上に腕を置き魅入っていた。 部室にはここまで姿勢を悪くしている人はいないので、部外者だとハッキリとわかる。 社に絡んでいた女子が、顧問に何かを言っているのを横目に見て銀がフンと鼻を鳴らした。
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