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社部活が終わり、顧問も後片付けを社に任せて戻って行く。勿論他の生徒も片付けを各々終わらせて帰って行く中で帰り支度ではなく、これから練習を始める。
凛とした立ち姿に、自然と猫背だった銀の背中も伸びた。
「部長っ!」
甲高い声に、一瞬で張り詰めた空気が壊され矢がとんでもない場所に刺さったのにため息を落とし声の主に返事をする。
「もう帰ったんじゃないのか?」
「その男とふたりは危ないです!私が見張ります」
ドカドカと戻って来たのは、さっきの女子だ。
「...いや、どちらかと言えば、君より杠だけで良いんだが」
ボソリと答えると、女子は目を見張る。
そして銀は口を尖らせて耳まで赤くして部室の天井を見上げた。傍から見れば不思議な光景が繰り広がっている。
「本当に部長は、こんな金髪ハゲ予備軍がいいんですか!?」
その言葉に銀はギロりと睨み付ける。
「あーん?誰が、ハゲ予備軍だよ!」
「そんな脱色してたら禿げるに決まってるじゃない!部長の素晴らしいキューティクル見習え不良!」
「なんだとこのくそ女!」
社はあまりにも下らない言い争いに付き合いきれないと、弓を片付け帰る支度を始めてしまったが、銀と少女はヒートアップするばかり。
そして、社はあろう事かそそくさと部室を出ようとしているのを銀が見付けて声を張る。
「はじめ!」
「なんだよ」
「なんで、いなくなろうとしてんだよ!」
「お前らの声にやる気失くしたから帰る」
そう言って、部屋を出てしまった。
いがみ合ってた女は社を追ってしまい銀がその場にポツリと取り残された。
女子と言い合い等した事はほとんど無かったし、こんな事態になるとは思ってもいなかった銀はごろりと冷たい床に身体を横たえた。
「何ムキになってんだよ...」
男は拳で語れと、意味のわからない信念を持っていた筈なのだが、相手は女性でそれは出来ないとなると、これが正しいと答えを導き出した。
「よし、俺はハゲてねぇし言い返しても問題ない!」
誰もいない部室で部外者の銀は場違いでしかないが、一人だからと独り言のように呟けば。
「あるだろ」と声が聞こえて慌てて銀は声のする出入口を見た。
「はじめ!?」
「着替えてもねぇし、鍵も掛けないとだからな」
と、戻った理由を口にした。
そしてカバンを取り出すと目の前で、道着を脱ぎ始める社を、銀はポカン...と口を開けてみていた。
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