prologue

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授業が始まり、黒板に殴り書きのように文字を書くスーツを着古している先生。 筆圧が強いのか何度も、チョークを折っては黒板に白い文字を埋めていく。 殴り書きのような乱暴な文字を写していた手を止めて(やしろ)が外を見る。 先程見たキスが頭から離れない。 思春期の男子である、それは普通にある事だと頭を振った所で社と先生の目が合った。 が、元々社は品行方正で文武両道という言葉がまさに当てはまる男。 「なんだ、外が気になったか?」 と、社を(たしな)める事もなかった。 その回答に、笑って返せば数人の女子が息を呑むのも社の耳には届いているはずなのに涼しい顔でまた、ノートに赤ペンで文字を書き込んだ。 そんな授業が終わり、生徒達は各自のする事のために目的地へと向かう。 その中で社は、上の階の生徒会室へと足を進めた。 鞄の中から、取り出した鍵を押し込み扉を開けば、さほど広くは無い生徒会室の全貌が見える。 窓際に、社長席みたく鎮座するパイプ椅子。他は全て丸椅子の為、何となく高級感は感じるものの、所詮は生徒の使う教室である。 左右には資料等か詰め込まれた、シルバーの本棚で下は棚になっている。 真ん中に長机をふたつ並べそれらを囲むように丸椅子が机の下に綺麗に収まっていた。 社はそれを通り越し、会長と書かれたプレートが置かれている机に鞄を置くとまた外を眺めため息をついた。 「あんな戯れ事何が楽しいんだ...」 妬みでもあるかのように呟き、その言葉は誰の耳にも届かずに消えた。 生徒会室で作業をしたり、生徒の要望を纏めていると、今呟いた言葉をまさに具現化したような投稿があった。 【付き合ったりするのをやめろとは言わないが、人前でやるのは風紀が乱れる。 秩序は必要】 「うん、確かに秩序は必要だな」 だから、あの異質な姿が目に焼き付いたのかもしれないと、納得して生徒会の印を押した。 こうやって日々人の投稿などを見ては、会議の議題にするかどうかを分別するのだ。 分別も終わり、次の集会の準備をする副会長の棚に資料等を押し込んで生徒会室を出て今度は道場へと向かう。 鞄を持ち、外へと出ると肌を突き刺す寒さに震えること無く凛とした佇まいで、部室へと歩き出した。 周りは既に、除雪されていて朝の出来事がまるで幻であるかのようにも感じた。 「よー会長」 声が聞こえて、社が視線を向けた先には頭から離れなかった男。
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