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社が弁当を包んでいた布を解こうとして結び目に手をかけていたが、その手を止めた。
「おい」
早く行けと促す様に購買を顎で示す社に、銀は髪をクシャりと握り込みながら机に伏して笑う。
「あー大丈夫」
その、大丈夫はどこから出るのかと社が問おうと振り返った。
しかし入口を見てすぐに前へ向き直った。
その行動に何があるのかと銀は机の上で寝そべる姿から身体を引き起こした。
社は弁当を開けて、箸を取る。
話し掛けるのを止めたのは、弁当を持った女子が、来たからだ。
飯が要らない理由は理解したとばかりに、社が弁当に箸を付けようとした時。
「銀ちゃん、作ってきたよ食べよ!」
銀に話し掛ける猫撫で声の女の声に、社はせっかく開いた弁当を乱雑に閉じ席を立った。
「わ、席あいたからから私もここで食べる」
その声を背中で聞きながら、社は生徒会室へと向かった。
生徒会室で、弁当を開いて大きく溜息を吐いて持っていた箸を置く。
「食欲が失せるな...」
女性の猫撫で声が、とても苦手で特に鼻にかけてわざと漏らす甘い声は心底嫌悪感を感じていた。
「何がいいんだか...」
何に向かってそう言ったのかは誰にも測れなかった。
昼の時間も過ぎ去り、席に戻ればまだ銀の女がいると溜息を吐く。
「俺の席...授業始まる寸前まで居座ったら邪魔だと思わないのか?人の事考えて無いんだな」
と、無表情で吐き出す辛辣な言葉に女生徒は顔色を変えて泣き出した。
「銀ーアイツなによ、私が悪いのぉ?」
と、縋り付く姿に、社は不快を感じてる様に眉間にシワを刻んだ。
「いや、お前がわりぃだろ、もうチャイム鳴ってんだ、ほら、帰れ」
銀に怒られれば多少は、堪えたのかしょんぼりと教室を出ていくと同時に先生が入ってくる。
「あーまた、杠か!」
そう言われて銀は口を尖らせた。
だがそれ以上の抗議はなく、授業が始まった。
社もやっと自分の席に着くと、後ろから声が聞こえてきた。
「お前女の子にあの言い方はキツいだろ」
それに、社は答えを返すことは無かった。
授業が終わり、女が再び銀を迎えに来た時には既に社の姿は無かった。
「なんだよアイツ...」
と、銀も舌打ちをして教室を出ると、数人の女子が寄ってくる。
何していたのか、新しいクラスはどうか...その問に曖昧に返しながら、学校を出る時。
ふと生徒会室を見上げた銀は、窓に背を預ける社の後ろ姿を見てもう一度舌打ちをした。
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