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夕方になり一先ずホテルに戻る事になった。煙草を切らしている事を思い出し、コンビニで購入してからホテルの喫煙所で一服しようとすると、珍しい人物がそこにいた。
「三浦さん?」
「…あ、お疲れ様です、葉月さん」
スマホを弄っていた彼女はすぐに画面を消し、軽く会釈をしてくる。
「吸う人、だっけ?」
「たまに吸いますね。前職で吸ってた名残がまだ残っちゃってて」
煙草本体だけでは銘柄は分からないが、女性が普通吸うような細いタイプのものではないし、煙の香りが結構独特で、鼻に残る。
「へー、何吸ってるの?」
「マイセ…じゃないですね、メ○ウスです」
「言い直さなくても分かるけど、ぶっちゃけ世代じゃないはずだよね?」
鞄を漁って「ジャーン」と自分で効果音を言いながら取りだされたボックスは、深い青色。こんな子が10ミリを吸うだなんて、誰が思うだろうか。俺はそのギャップに耐えきれず、フハッと吹き出してしまった。
「え、そんなに面白かったんですか?」
不思議そうに目を丸くしながら小首を傾げている。ああ、確かにこの子は面白いし、多分話の分かるような子だ。あの二人が口を揃えて気にいるのも何となくわかる。
「吸ってると思ってなかったし、そんなキツイのだと思わなくて」
「ああ、良く言われます、女性らしさがないと。どうせ吸うなら吸った気がしないやつじゃないと勿体なくないですか?」
高いですし、とげんなりした表情を見せる彼女。そこから2本、3本と吸ったが不思議と会話が途切れる事はなかった。あまりこんな時に仕事の話するのもな、と思っていたが寧ろ三浦さんから、興味深々で仕事の内容を聞いてきた。
「で、そのまま寝ないで次の日仕事」
「うはー…それしんどうどころの話じゃないですよね? お客さんもよく呑まれますね…」
話を振れば少し大袈裟なリアクションでそれが返って来る。そうこう話していると新島さんが慌てた様子でやってきた。
「二人とも! もう夕食の時間間に合わなくなるよ!」
「だってさ、一緒に行こう」
「ですね。部屋の子から先行くって連絡入ってました」
ずいぶん長い間話し込んでしまったらしい。彼女はスマホを遠目で見ながら、すぐに鞄に入れ直し俺の後ろを付いてきた。
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