第1章 葉月隆信

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 3カ月前の秋。残暑がまだ残る中、慰安旅行へ俺達は北海道に来ていた。都心から飛行機で飛び立ち、営業部のみが集まった比較的小規模な旅行は、20名程度で開催された。  目的地に到着すると俺は仲のいい先輩達二人と行動をした。基本的に夕食時のみ集まり、それ以外は自由行動という比較的楽な旅行。夏前に中途入社した5人の話で昼食は盛り上がった。 「俺、ずっと外で見れてないんスけど、誰が一番出来るんですか?」  何気なくそう質問をすれば、二人とも「「三浦さんだな」」と声を揃えた。 「へえ、二人が同時に言うってことはよっぽどですね」 「仕事が出来るって言うよりは意思疎通が一番出来るからな」  俺より5個上、40歳の西条さんは椅子に深く腰掛けてそう言った。スマートでいつも香水を付けているお洒落な人。どうやらかなり三浦さんの事が気に言っているようで、あーだこーだと話を続けている。 「そんで、ザルなんだよ」  会話をぶった切ったのは俺の3個上、38歳の新島さん。普段はかなりしっかりしているが、お酒が入ると直ぐ絡んでくる、ある意味面白い人だ。社歴で言えばこの人が3人の中で一番長い。 「へー、珍しいですね。今時男も呑まないのに」 「顔色も何も変えないからなー。話し方も崩れないし、あれは相当イケると思うよ」  二人はそこから三浦さんの話で盛り上がる。  そんなにいい子なのか? 特に印象には残ってないし、他の子と大差ないように感じたけどな――…俺は昼間からビールのグラスをあっさりと飲みほした。
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