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雨くんの病気も少しずつ快方に向かっている。あの日から雨くんはお父さんと話し合い、無事に和解した。今は入院中で、お見舞いにも行っている。連絡先も交換し、たまに不安や愚痴が送られてくるが、頼ってもらえて嬉しかった。そんな私ですが、今私もひとつだけ不安がある。
それは、晴輝。最近は朝も家まで来なくなり、ここ一週間ぐらい一言も話していない。
そんな私たちに大きな嵐が接近してきた。
それは、私たちを惑わし、苦しめた。
コンコンコン
「はい。……ああ、美月さん」
「こんにちわー。はい、今日は美味しいケーキも一緒だよ!」
「やった!……うわぁ、美味しそう」
「よかった。最近元気そうだね」
「うん。少しずつ回復してきているし、父ともちゃんと話せた。全部美月さんのおかげだよ」
「そんなわけないよ、雨くんが頑張ったから……はい。じゃあ食べよう」
毎日この時間だけを楽しみにしている。この二人だけの時間は私の宝物。
「あー、美味しかった。ありがとう」
「よかった。じゃあ、そろそろ行くね。また明日」
「美月さん、大丈夫?毎日毎日大変じゃない?」
「ううん、今はこの時間が私の楽しみだから……迷惑だった?」
「いや、ただ無理してないかなって思っただけだから」
「本当?」
「うん」
「分かった、じゃあまた明日。バイバイ」
「バイバイ」
家に帰る途中で、引っ越しトラックを見かけた。そのトラックは私たちに転校生と嵐をもたらしたんだ。
次の日、
「みんな席つけ!今日は転校生が来ている。凉白、入って」
入って来たのは、色白できれいな黒髪をボブカットにした女の子。
「凉白雪音です。よろしくお願いします」
そう言って、上げた顔はとても美人だった。
「席は蒼海の隣な。じゃあ、授業に遅れないように」
雨くんが入院してから、席替えがあった。私は晴輝の隣で、晴輝の後ろには快靖がいる。
先生がいなくなると、凉白さんが私たち三人を見回して言った。
「これからよろしくね」
もう黒い雲はすぐそこまで来ていた。
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