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凉白さんが来てから一週間がたった。凉白さんはクラスに馴染んでいった。
その日の朝、私は晴輝を待ち伏せしていた。あまりにも避けられているので、こうなったら聞き出してみようと思ったのだ。
「まだかな……」
と、待ち始めて10分が過ぎた頃、
「すみません。少しよろしいですか?」
若い男の人に話しかけられた。
「はい、どうかされましたか?」
皺のないスーツに身を包み、端正な顔立ちをしている人だった。
「ここまでの道を教えてほしいのですが」
差し出された紙には、ここから車で20分ほどのところにある店名が書かれていた。
「ここでしたら、この道真っ直ぐ行って……」
「すみません。よくわからないので、道案内していただけませんか?学校まで送るので」
「それは……」
確かに行き方は複雑で分かりにくいと思うが、見知らぬ人の車は乗れない。それに、遅刻する可能性もある。
「すみません。道案内はできません。誰か……」
「いいからさっさと乗れよ」
「えっ」
気づいた時にはもう遅く、手首を強い力で握られていた。
「やっ!……離して!」
そう言っている間にも車の方へ引っ張られていく。息が上手くできなくなってきた。
「静かにしろ!さもないと……」
「美月!」
この声は……
「……っ晴輝!」
「おい!美月を離せ!」
「うるせえ!ガキは黙ってろ!」
ピーポーピーポー
どこからかサイレンの音がする。その音はどんどん大きくなっていく。
「チッ」
男の人は舌打ちをすると、私を押して逃げていった。体が地面に叩き付けられる。
「美月!」
「……サイ、レン、は?」
「俺だよ」
「快靖!警察呼んだのか?」
「そんなわけ、これだよ」
そう言って快靖が見せたのはスマホの画面。
「なんだ──。」
それまでだった。晴輝や快靖が私の名前を呼んでいるのが意識の奥で聞こえた。
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