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「美月ちゃん!……良かった、痛いところとか無い?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました」
「じゃあ、これ飲んでゆっくりして行きなさい」
「……はい」
母親が出ていくと、美月が俺を見て言った。
「晴輝、ありがとう」
「いや、俺が悪かったんだよ。……約束破ったから」
「私ね、それ思い出したの。小学生のときもこんなことあって晴輝が助けてくれたこと。あの日から毎日送り迎えしてくれたこと忘れてた」
「……なんであんなとこにいたの?」
「晴輝とずっと話せなくて、このままじゃ嫌だったから」
「ごめん……本当に」
「ううん。助けてくれてありがとう。ほんとに助かったよ......怖かった......」
手が震えている。
「美月、泣いていいよ。こんなときまで我慢すんな」
「晴輝......」
美月は小さいときから何でも自分の中に溜めてしまっていた。だから時々吐き出さないと辛くなって壊れてゆく。今の俺は受け止められる。だから──
「美月......」
ゆっくりと美月を抱き締める。すすり泣く声が静かな部屋に響く。
どれぐらいたっただろうか。美月は泣きつかれて眠ってしまった。抱き締めた体をゆっくりと横たえる。色白で儚く、今にも壊れてしまいそうな美月の髪をそっと撫でる。
「美月......好きだ、あいつのところになんか行かないでくれ」
幼い頃から変わらない、美月の甘い匂いがした。
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