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「それがわからないんだよ。でも、あの氷藤が20位以内じゃないってただ事じゃないだろ」
「えっ!」
「先生が言ってた一人は俺だ」
「そんな……まぁ、おかしいとは思ったんだよね。うちのクラスは快靖と雨くんの二人は必ず入っているのに男子一人だけなんて、先生の間違いかと思ったんだけど、まさか……」
そのとき、晴輝が息を切らせながら走って来た。
「美月、快靖!氷藤が……」
「しーっ!声大きいって!」
「あっ、悪い」
すると、たくさんのクラスメイトが走って来た。
まずいと思ったときにはもう遅かった。
「氷藤、どうしたんだよ」
「お前の名前がないとか初めてだよな」
「氷藤くん、なんかあったの?」
「今回は手を抜いたとか?」
「皆、止めて!」
私の叫びは誰にも届かない。晴輝や快靖も言おうとしたとき、
バン!
「うるさいんだよ!何にもわかんねーくせに、色々適当に言ってんじゃねーよ!お前らになんか俺のことなんかわかんねーよ!」
そう言うと雨くんは教室を飛び出した。
「雨くん!」
「美月、行け。ここは俺と晴輝が何とかするから」
その言葉を聞いて、雨くんを追いかけた。晴輝も大きく頷いてくれた。
「雨くん!」
雨くんはどしゃ降りの中、中庭にいた。
「風邪引いちゃうよ」
聞こえていないのか戻ってくる気配がないので、覚悟を決めて、外へ出た。
「雨くん!」
やっと振り向いてくれたが、やっぱり目が合わない。
「美月さん」
「何があったの?」
「……君に理解できることじゃない」
「できるよ!それに……雨くんは私に色々教えてくれた、助けてくれた。だから今度は私が助ける。お願い、話して」
「どうしてそこまで僕に干渉するんだ!」
「…好きだから。」
「えっ」
「雨くんのことが好きだから!」
雨くんは驚いたように大きく目を見開くと、諦めたかのようにゆっくりと話し始めた。
「……目が、見えないんだ」
「…!」
「階段の端が見えない、テストの字が読めない、数字が判別できない。それに……」
そこで言葉を切ると、近づいてきて、私の頬に右手を添える。身長差で私が見上げる形になった。
「ここまで来ないと、誰かわからない」
髪の毛から滴が落ちる。その髪の隙間から、雨くんの悲しげな瞳が見える。雨は降り続ける。彼の心を表すかのように。
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