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古いアパート
◆
町の中を「水」が流れている。
初めてそう感じたのは小学五年生の夏だった。
地面の中でもない、体の中でもない。確かに水は町のあらゆる場所を流れていた。
遥か昔のことだが、その感覚を今でもはっきりと思い出すことができる。
その頃、家の周りの砂利道がアスファルトで舗装され始め新しい家が次々と建ち並び、町の形が少しずつ変えられていった。
けれど新しい道にはまだ車はほとんど通ることがない。
新しくなりつつある町に人が追いついていない。
そのことを証明するかのように、家の前の綺麗になった道のど真ん中で僕は近所の友達と遊んだり、夜には大の字に寝転がって星を眺めていたりしていた。
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