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「好きだよ、椿」 私の心を射抜くように燃え上がる漆黒の瞳。 「俺には椿だけ」 キスを続けながら、海さんの口からは出てくるのは甘い言葉だけ。 「だから俺を信じて、椿」 海さんを疑っていた気持ちは、もう何処かに飛んでいった。 「椿、何か言って?」 何度も指に落とされるキス。 たまに指にかかる海さんの熱い吐息。 掴まれている手は熱い。 私も、海さんも。 全身が熱いし、 そのせいか脳が沸騰しているような感覚でぼぉ〜っとするし、 心臓は破裂しそうなくらい激しいし、目眩もして…… とにかく今の海さんは私には刺激が強すぎる!!! もう限界!!! 「あっ!弥生さんは大丈夫なんですか!?」 限界を感じて叫ぶと、やっと海さんはキスを止めてくれたが、不服そうに眉をピクリと上げた。 「大丈夫、命に別状は無いよ。それよりも話を逸らすな」 私の考えは海さんにバレバレだし、話を逸らした気に入らなかったようで、逃げるなと両頬を掴まれた。 海さんの顔は目の前。 先程よりも近い距離。 目の前の漆黒の瞳は、私しか見ていない。 「彼女にはもう伝えた。二度と会わないと。椿が好きだからって」 両手から伝わる温かい熱と、真剣な声が心臓に伝わり、全部が温かくなる。 さっきまでは世界の終わりだと思っていたくらい絶望していた。 全部が真っ暗闇みたいだった。 でも今は嘘みたいに幸せで、心は温かくて、全てが明るく見える。 だって海さんは弥生さんがナイフで手首を切っても、血がワイシャツに付いている状態で私のところに飛んで来てくれた。 私を好きだと言ってくれた。 私を選んでくれたから…… 「だから、俺と帰ろう?」 私の答えは一つだけ。 「はい……」 返事をすると、嬉しすぎて自然に笑顔と涙が溢れた。 好きな人が、自分と同じ気持ちを抱いてくれるって、なんて幸せなんだろう……
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