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海さんは優しく私に微笑むと、私の左手を掴んだ。
ポケットから何かを出すと、私の薬指に持っていく。
そのままゆっくりとつけているのは、先程までは嵌まっていたが、封筒に入れたはずの偽物の結婚指輪。
「もう二度と外さないで」
二度とってことは、一生ってこと……
偽物だった結婚指輪が本物になった。
嬉しくて海さんを見る。
目が合うと柔らかく微笑んで返してくれて、目頭と胸が熱くなる。
私は涙が溢れすぎて言葉が出せなくなって、首を縦にコクコクと振る。
海さんが私の溢れた涙を優しく拭ってくれた。
海さんが私の唇に人差し指をゆっくりと滑らせる。
触れられた唇から全身へと一気に熱が広がっていく。
目の前の海さんは何故か艶かしく笑っている。
その顔にも変に動悸が上がる。
「椿、分かんない?」
見つめていると、唐突に海さんに訊ねられた。
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