4/41
1826人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
怒りしか込み上げないが、私はその言葉を口から出せず、出すどころかそれをグッと喉の奥に飲み込んだ。 だってもし今私が文句を言ったら、どういう教育をしているんだと怒鳴られるのは母だから。 何か良い打開策はないかと思案を巡らせる。 「なんだ、その顔は?文句があるのか?」 言葉は飲み込んだが不満な感情を隠しきれなかったようで、父を見ながら眉間に皺を刻む形となって現れたようだ。 父はそんか私の態度が不服で、声を張り上げた。 怒り狂うかと思っていたら、突然意味深にフッと笑った。 何を言われるのだろうと身構える前に父はあっさり言った。 「お前が拒否するなら(さくら)が行って結婚させるだけだ」 「え」 桜は今年十六歳になったばかりの高校一年生の私の妹だ。 私が行かなければ、その妹を行かせて結婚しろと強要するの? 私は眉間に更に深い皺を刻む。 私が行かないと反抗したら、本当に桜を行かせるだろう。 父が言い出したことは我が本多家では絶対。 桜には行かせられない。 「……私が、行きます……」 私はやむ無く頷いた。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!