第一章

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 いつもと違う、自宅への向きに。いつもとは反対側の、そう言えば滅多に歩いたことのない、家と学校とを繋ぐ道の先から見た、自宅への風景に。まりんは、少し違和感を感じていた。あれえ……? こんな路地、あったっけか。通り過ぎたのは、ほんの数十メートル。しかし、家までのその数十メートルの間に、見覚えのない細い曲がり角があるのを見つけたのだ。  ほんとに細い路地だから、今まで意識したことなかったのかなあ。まりんは興味本位で、その路地へと近づき。曲がり角の先を覗いてみた。ほんとに人が2人やっとすれ違えるくらいの道幅で、しかし思ったよりその路地は細く長く、奥へと続いていた。先ほど感じた違和感を胸に秘めつつ、でもまだ外は明るいから大丈夫よね、危ないことはないわよねと。まりんは好奇心を押さえ切れず、その路地へと入っていった。  両側を壁で挟まれた細い路地を進んでいくと、右側に急にスペースが開けた場所があった。それは、小さな商店への入り口だった。こんな、普段は見落としてしまうような細い路地の、その一角にあるお店。一体何のお店だろう……?   店構えは昭和を思い起こさせるような古めかしさで、木造の玄関口に、これまた木製の看板がぶら下がっていて、手書きで「よろず屋」と書いてあった。玄関口の扉は、まるでまりんがここへ来るのを待っていたかのように、無防備に開け放たれていた。そしてまりんもまた、導かれるかのように、その店へと足を踏み入れた。
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