第五章

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「半分おもちゃみたいなもんだけどね。若い女の子が旅をするのに、身を守る道具としては、あった方がいくらかましだろうよ」 「ありがとう……!」  まりんは、「飛び出すナイフ」を手に入れた。 「本当におばさま、色々お世話になりました。ありがとうございました!」  まりんはヌシおばさまに、深々と頭を下げた。そんなまりんを見て、おばさまは照れくさそうに笑った。 「よしとくれよ、そんな仰々しい挨拶。でも、ナツミちゃんも言ってたけど、また戻ってくるんだよ? もっと色んな刺繍、教えてあげるからさ」 「はいっ!」  まりんはヌシおばさまと固く抱き合い、刺繍ものの家屋を後にした。  そしてまりんは再び、あの洞穴の前、ケンタの墓の前に立っていた。    ケンタ、本当に色々、ありがとう。ケンタがいてくれたから、あたしこうやって、この世界で生きていける。冒険にも旅立てる。ここに、こうして立っていられる。全部、ケンタのおかげだよ。絶対また、ここに戻ってくるから。めちゃくちゃ成長して、レベルアップして。そして、二人で帰ろう。元の世界に。  まりんはお墓に向かって静かに手を合わせ。そして、旅立つ用意を整えたレーソスの方を向き直った。 「ではまりん殿、行くとするか」 「はいっ!」  まりんは、元気よく答えた。  足手まといヒロイン・まりんの冒険の旅は、まだ始まったばかりだった。              ──第一部・完──       and to be continued……!!
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