第一章

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 2 「こんにちは……」  恐る恐る、小さく声をかけて店に入ったまりんだったが、それに対する返答はなかった。誰もいないのかな。まあ、こんな路地の片隅にあるお店だしね。まりんはゆっくりと、店の中を見渡した。   そう広くない店の中は、「よろず屋」の看板に相応しく、まるでがらくた市のように、色んな雑多なものが所狭しと置かれていた。しかもそのどれもが、店構えと同じく昭和の時代を思わせるような時の経過を感じさせていた。  誰かの手作りらしい小物入れや写真立てといったものから、どこかの倉庫で眠っていたんじゃないかしらと思うような、これも職人の手作りのような模様の刻まれた衣装タンスなど。大きな家財道具から小物まで、店の床や棚は、古めかしい商品で埋め尽くされていた。でも、こういうところに、結構掘り出し物があったりしてね。古いものの価値などわからないけど、何か珍しいものはないかしらと、まりんは店内をもう一度改めて物色し始めた。 「あ、これ?!」  それは、いわゆる「ものの本」で読んだことのある、西洋の占い板だった。日本で言えばこっくりさん、ウィジャー板って言ったっけかな? 古いホラー映画なんかでは見たことあるけど、実物は初めて見たわ。しかも、「新品」ではなく、明らかに誰かが使った痕があるような。誰かがこれで、ほんとに占いをしてたんだわ……。その想像は、まりんをちょっとドキドキとさせた。こんなものまであるのね。まりんは、本当にこの店は「当たり」かもしれないと、並んでいる小物をじっくり観察してみることにした。すると。  雑多な小物の中で、ひときわまりんの目を引くものがあった。それは、古い鏡だった。大きさで言えば、鏡台の上に置いてある程度のもの。目の前に立つと、ちょうど上半身がすっぽり映るくらいの。しかし、何よりまりんの目を引き付けたのは、その鏡の装飾具合だった。
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