序章

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「ずいぶんと(たくま)しくなったものですね」 男は静かに告げた。 研ぎ澄まされた空気が、肌にピリピリとした感触を伝えてくる。 「あれから、わずか一年半でここまで来れるとは。 さすがはアゼル・レンフォスというべきでしょうね」 男の背後で八色の光が出現し、それぞれの形を作っていく。 「今度はーー手加減しませんよ?」 白銀の大鎌を(たずさ)え、男の眼が蒼く輝く。 その姿が眩しく輝いて見えていたのは、もう遠い過去だった。 「今の俺にハンデは要らない。 あんたならとっくに分かってるだろ?」 「ふっ……どうやら強くなったのはだけではないみたいですね」 「当たり前だ。 立ち止まったまま、ここまで来れるかよ。 時間もないんだ、さっさとやろうぜ」 アゼルは黒い大鎌の切っ先を男へ向ける。 三度目はもうやってこない。 それだけは確信していた。 「気の早いことだ。 その気力が、最後まで続けば良いのですがね……!」 戦いの火蓋は、切られた。
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