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半透明の虹色キャッツがキラキラと光の中で揺れている。
綺麗な色。赤、オレンジ、黄、緑、水色、青、紫。それぞれがそれぞれを主張しているのにキラキラと光の中で輝いている。それだけじゃない。一段と輝いて見えてしまうのは、そのものが持つ可愛さとか美しさだけではなく、きっとレア物だという価値観。それを手にした時の誇らしさ。感情と常にリンクしてしまう輝きが心の片隅にあった。
「それに、転校して来た理由知ってる?」
一瞬何の話か分からなかった。虹色キャッツと夏川君が結びつかなかったのだ。だから混乱した。でも記憶の紐が、前の話へと戻ったことと結びつける。
話が戻ったのだ。夏川君へと。私の中のスイッチが切り替わる。
「え、知らない」
ふうちゃんが消しゴムを下ろし私に詰め寄った。一瞬で視界が色あせたように私の中の濁った部分が顔を出す。
「…カンちゃん言ってたんだけど……おそらく〝いじめ〟だって。それも入院するほど酷いやつだって」
ふうちゃんが『いじめ』の部分だけをわざと口パクにした。
「入院!」
「シー。声大きいよ」
「ごめん。びっくりして」
ふうちゃんの口元でピシッと立った人差し指に咄嗟に誤り、出てきた言葉に蓋をするように両手で口元を抑えたのは同時だ。
衝撃的だった。イジメで入院。東京からこんな田舎に転校してくるのだ。訳アリだって言われてもおかしくない。
近くにいる皆んなが何事かと一瞬こっちを見るが、笑顔で誤魔化し何でもない風を装った。夏川君は聞こえているのか聞こえていないのか分からないが、一瞬たりとも振り返ることは無かった。
周りの視線が外れる頃を見計らって、ふうちゃんが更に小声ではなし掛けた。
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