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「前の学校でいじめられてね、袋叩きにあったんだって。で、今でも後遺症があるらしくて通院しているって」
「…そうなんだ。なんか怖いね」
驚きを隠せなかった。それも先週見たばかりのいじめの特集が瞬時に駆け巡り、鮮明な映像と情報が生々しく蘇る。
ムカつくからという理由だけで半死に追い込む集団リンチ。キモイ、死ねと毎日浴びせられ自殺をした10代の女の子。様々な、シチュエーションが溢れてくる。決してテレビなどによる知識をはみ出すものでは無かったが、どれも12歳の私が想像できる最悪なパターンに他ならない。しかも夏川君は転校して通院しているぐらいのダメージを与えられているのだ。
驚きと心配の狭間で興奮気味で話すふうちゃん。その瞳に噂話を愉しむイキイキとした虫が宿っているのが分かった。そして、私の瞳にも気付かないうちに同じ虫が入り込んでいた。
興味本位しかない聞きたがりな自分が顔を出したと気付いた時には、遅かったのだ。もう既に夏川君を普通に見ることが出来なくなってしまっている。最初から偏見の目ではあったことは否めないが、そこに輪を掛けて自分とは違う世界の人だと差別の思いが深まったことは確かだった。
男子は皆な泥臭く乱暴で騒がしく、ガキんちょが当たり前。少なくとも私の周りの男子はそれが普通だったし、どこかでそれが男子という生き物だと理解していた。だから本ばかりを読む暗く一人ぼっちの夏川君。更にいじめに遭い通院している。それは自分たちとは違う変な人から更に異質なものへと変換してしまうことは容易いことだった。
自分たちと違うものへの排除。つまり枠からはみ出すものへ、異質という烙印を無意識に押したのだ。
「私たちとは違うんだよ」
簡単に発したふうちゃんの声は私の心に響いた。
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