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指輪とナイフ
「遅かったじゃない。」
「待たせてごめんね。いろいろとやることがあって。」
「あなたは昔っからそうね!ほんと、じれったい人だったわ。」
「初めてデートした日も、なかなか手が繋げなくって、君が痺れを切らして僕の手を握ったよね。」
「そうそう。なんて女々しいんだろうって思ったわ。」
「僕の誕生日も、せっかく料理を作って僕の家で待っててくれたのに、仕事が長引いてね。帰るの遅くなって怒られたなぁ。」
「あのときは本当に頭にきたわ!しょうがないってわかってても、初めてあなたのために料理を作った日だったから。」
「わかってるよ。」
「あと、あのときも。私が泣いて電話をかけた日。」
「ああ、どうして泣いてたんだっけ。」
「そんなのもう何年も前の些細な事だから覚えてないわ。あのとき、あなたは私のところに来てくれるって言って、電車で向かってたのに、降りる駅を間違えてたわよね。」
「そうだったね!僕はあまり電車に乗らないから、焦ったよ。」
「あのときも少し腹が立ったけど……。」
「でも君は僕の顔を見た瞬間、涙を溜めながら僕に走り寄って、抱きついたよね。」
「だって安心したんだもの。私ってつくづくあなたに弱いなって思ったわ。」「いろんなことがあったね。本当に、長かった。」
「……本当にいいの?」
「今更どうしたの?」
「あなたのお母さんやお父さんは、いいの?」
「うーん、きっと許してくれないだろうね。でも、僕は君と一緒にいたいんだ。」
「…………。」
「それに、これ以上待たせたら、また君に怒られちゃいそうだし。」
「私に怒られるのが嫌だから?本当に女々しい人。」
「ひどいなぁ。……本当は君を愛してるからだよ。」
「……知ってる。」
「これからもよろしくね。」
「こちらこそ。」
光る銀色。
反射する白。
二人を結ぶ赤。
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