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私はできるだけ平然を装って答えた。それなのに二人はそろって私の顔をじいっと見つめた。
そして、
「トシ兄と何かあった?」
声をそろえて尋ねてくる。
私は引きつりそうになる頬を必死に緩め、微笑もうとした。
「何にもないよ」
「でも元気ないじゃん」
シンくんが言い、ミナちゃんも眉を下げた。
……全く、この二人には敵わないな。私は困ったように笑った。
トシは幼稚園からの幼馴染みで、高校まで腐れ縁が続いている。シンくんとミナちゃんの二人に出会ったのも、トシがきっかけだった。彼はたまに人間でないものを見ることができた。彼に紹介されると、なぜか私にも見えるのだ。
見えるモノの大半は悪いモノではないらしいが、実際のことは分からない。トシが私に紹介してくれるのは、悪いモノ以外であるからだ。シンくんとミナちゃんはこの高校に住む霊の類らしい。詳しいことは分からない。
「トシ兄とけんかしたの?」
ミナちゃんが泣きそうな表情になる。私はあわてて首を横に振った。
「違う違う! そんなことないの」
けんかじゃない。そもそもトシは何も悪いことをしていない。私が勝手に落ち込んでいるだけだ。
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