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「ねぇねぇ、これなぁに? どうして机にお布団が挟んであるの?」
着物の袖ををはためかせて少女が問う。
見た目4、5歳だろうか。
物珍しそうに遠巻きから私の方を覗き込んでいる彼女は、つい先日突然家にやってきた座敷わらしだ。
ただし、信じ難いので“自称”が付くが。
「え…あ、君知らないんだ? これは『こたつ』っていうものなんだけど…」
未だ正体不明な彼女に、なんだかんだ言いつつもこの数日で慣れてしまっている自分がいる。
まぁ別に、害がないならいいのだけれど。
というより、こたつとは日本古来のものであるから、むしろ本来は君の方がよく知っているだろう、とも思う。
だが、それにおいてはこの座敷わらし曰く、
『わたしは妖怪になったばっかりなのー! このお家がはじめてなのっ!』
ということらしい。
それなら、もっと純日本家屋に住み着いたらよかったろうに…。
まぁ、いいか。
ふむ、とひとつ頷いて、私は布団を少しだけ持ち上げると、座敷わらしを手招きした。
「え! いいの!? あ…でもそっちは畳じゃないよね…? 」
「うん? あ、そっか、座敷の上じゃないと歩けないとか?」
「そういうわけじゃない…けど…。なんか、ちょっとヘンな感じがするっていうか………」
得体の知れないものでも見るかのように、フローリングに不安げな眼差しを向ける座敷わらし。
そして意を決したように顔を上げると、恐る恐る足を伸ばして、かなりゆっくりと歩き始める。
「………別にただの床なんだけどなぁ…」
私はぼそっと呟いて、思わず苦笑いを浮かべた。
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