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「昨日はごめんなさいね、連絡しなくって。でもね、絹子さんがどうしても一緒に食事したいって言い張るから、むげにも断れないでしょう。お酒もいただいちゃってね、いい気分だったのよ。絹子さんのところに泊まるのはちょっと心配だったんだけど、でもいつの間にか眠っちゃってたから大丈夫だったわ」
「す、すみません」なんとか遮っていった。「何が大丈夫だったんでしょうか」
「幽霊よ。ねえ、あの湯呑、昨日はあのままだった? もしかして勝手に動いたりしてない?」
「動いてませんねえ」鏡花がロッカーを見ながらのんびりとした口調で言った。「昨日、置いた場所にそのままありますよ」
「先輩の尾野さんだっけ」さくらは鏡花に向かって呼びかける。「あなたも一緒に座って話を聞いて。ほら、早く早く」
ほうきを持ったままやってくると、鏡花は理子の隣に座った。
「あなたも霊感がないのよね。誰か友達に霊感のあるかたとかご存知ない?」
「どうでしょうねえ」ほうきを壁に立てかけて答えた。「どうして湯呑が動くと思ってたんですか」
「絹子さん、嘘をついてるから。どこがどうってわけじゃないけど、長いつき合いだからなんとなくわかるのよ。本当なのよ」
「信じますよ。でも、それで湯呑が動きますか」
「そんなわけないでしょう」さくらは鏡花を軽くにらんだ。「どうして嘘なんてつくのかわからなくて考えていたら、思い出したのよ。幽霊のこと」
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