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「おまえみたいなただ器用なだけの凡人と違ってあの子は将来世界を舞台に戦うことになる天才なんだ。絶対に傷つけるなよ」
大好きなじいちゃんに凡人呼ばわりされて傷ついた。でもじいちゃんの言うとおりだ。おれが凡人だということも、おれが葉月を好きだということも。
合格発表日、掲示板に葉月の受験番号を見つけておれが泣いたのは本当だ。筆記試験、葉月と同じ教室で受験した。面接練習で葉月が自撮りした動画(今も消さずに暇なときに再生してる)を見ていて、おれは葉月の顔も声も知っていた。
葉月はおれの斜め前の席にいた。彼女の受験番号もそれで分かった。一心不乱に鉛筆を走らせる葉月に対して、おれは葉月がそばにいることで胸が苦しくなって全然目の前の試験問題に集中できなかった。
自分の恋心をまっすぐにえたやにぶつけてくる葉月を見て、えたやはおれの分身なのにおれはえたやに激しく嫉妬した。葉月の恋人になるのはえたやじゃいけない。この杉野疾風でなければ!
おれは本当なら余裕で一高にも入学できた。勉強より部活を頑張りたいという理由をでっち上げて二番手校の海星館を受験した。本当は葉月と同じ学校に行きたかっただけだ。そのことを葉月に教えたいけど、そうするとえたやがおれだってことも伝えないといけないから無理か……。
「恋愛って難しいね」
「十年早いわ!」
間髪入れずに返された。喜一郎の認知症はまだ当分大丈夫のようだ。
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