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第三章 お母さんの明るい老後のために
「森さん!」
「杉野君、お、おはよう」
校門の辺りで疾風に呼びかけられた。今日もさわやかな笑顔だ。心の準備はできている。昨日のあれはちょっとした冗談だから。すぐにそう宣告されたって私は取り乱したりしないよ。
「夜、まったく寝られなかったよ」
偶然ね。私と同じで絶望していたのかな?
元気づけるためとはいえ、こんな性格ブスに告白なんてしてしまって。
「森さん、スマホ持ってるよね。LINEでもやり取りしようよ」
心の準備はできてるんだ。さっさと昨日の告白は勘違いだったと宣告してほしい。
と思ったけど、言われるままにお互いを友達登録した。家族以外でLINEの友達になるのは疾風が初めてだ。でも、本当は友達じゃなくて彼氏。ややこしいな。
疾風がふと心配そうな表情になった。
「森さん、ずっとなんか言いたそうだね。おれに聞きたいことあったら遠慮なく聞いていいよ」
「昨日の君の告白は夢なのかな。現実なのかな」
一瞬キョトンとしたあと、疾風は腹を抱えて笑いだした。何事かとほかの生徒たちが振り返る。
「現実だよ、現実。あははははははは!」
呼吸できてるのかなとこっちが心配になるくらいの笑い声に、私の眠気も覚めてしまった。大笑いされてしまったけど、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
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