三、渡辺ミナモ

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 七海カナタの身体――体操服から伸びる脚、半袖で露わになった細い腕を見つめながら思う。あんな戦いの後でも、一晩経てばもとに戻っている。彼女と出会って、もう二度も刺しているのに、その痕跡はまるで何も見つからなかった。彼女の表情だってそうだ。あんなことが起っても、眉一つ動かさない。まるで時間が止まっているようで――ふと思い出す。 「もう千年になる」  彼女は確かにそう言っていた。彼女の時間は実際に止まっているんだ。悪魔との戦いを千年も? 死なずに? 一体何故? カナタたち自殺者を戦わせる死神の目的は? いくら考えても分からない。七海カナタ――名前の通り、近くにいるのに、遠くにいるみたいだ。 「カナタ……」 「名前呼び?」  振り向くと渡辺ミナモがニヤニヤ顔で聞き耳を立てていた。 「うわぁ! ミナモさん!」 「へぇ、七海さんのこと、もう名前で呼んじゃう仲なんだ。私なんか小学生からの付き合いで、部活も一緒なのに、呼び捨てしてくれないよね」 「いや、これは言い間違いというか、聞き間違いというか」 「あ、分かった」  ミナモは何か閃いたのか、目を細めて悪戯っぽく笑った。  中学の頃からの付き合いだから知っている。こういう時の彼女は、何も分かっていない時だ。 「好きな子には積極的になるタイプなんでしょ?」 「何言ってるんだよ!」  思っていた通りだ! 何言ってるんだ、この子は!     
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