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二階に上がり、部屋に入って目に入ったのは、棚の上に置かれた漫画の表紙。グロテスクな描写が見え、反射的に手で払い除けてしまう。表紙の背景は赤で塗りつぶされていて、嫌でもさきほどの出来事が連想された。
「本当に……この手で……刺した……のか?」
呼吸を整え、目を閉じて記憶を辿った。
直ぐに思い出されたのは銀色に光るナイフの刃。
彼女の胸の中に沈んでいく、血に濡れたナイフ。
皮膚を裂いて、溶けるようにナイフを受け入れる彼女の身体。
それでもなお、彼女は表情を変えなかった。
まるで痛みを感じないかのように。
いや――感じていない訳じゃない。
彼女は離れそうになる身体を無理に押さえ付けていた。
ナイフが沈む度に、目を細めていくその反射の一部始終を、俺は見ていた。止められなかった。気づいた時は、全部、遅かった。
「うわッ……あぁあああああッ!」
布団に入って目を閉じても、脳裏に浮かぶのは、黒と白のコントラストと――赤。
夕陽の中で佇む彼女の白い肌に――。
赤。
赤、赤、赤、アカ、赤、赤、赤、赤赤、赤赤赤赤アカ赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤アk赤赤ッ!
「何で……俺が……何で……」
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