一、七海カナタ

1/17
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

一、七海カナタ

 数学の教師であり、担任の原田が眉を寄せて生徒たちを見まわした。 「お前らさ、舐めてんのか?」  言葉使いは荒いが、原田は女教師だ。しかも、美人と噂されるほどには、整った顔立ちをしている。ちなみに、その美人教師が、朝のHR一発目から額に青筋を浮かべているのには理由がある。  先週行われた定期テストのクラス平均が悪かったのだ。数学教師が担任であるにも関わらず、数学のクラス平均は学年最下位。誰のせいで朝から説教を受けなきゃならんのかと、文句の一つ言いたくなるが、かくゆう俺も平均点を下げた主犯の一人。周囲を責める権利はない。  説教の内容が、クラス平均の悪さに留まらず「君たちの将来」を憂うターンに変わり、生徒もうんざりし始めたころ、原田は何かを思い出したかのように机の端を指先で叩いた。 「そうだ、今日は転校生がいるんだ。入ってこい」  こんな時期に転校生? 親の転勤だろうか。俺が顔を上げたのと同時に、周囲の席から興奮の声が上がった。 「すっげー美人!」     
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!