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三、渡辺ミナモ
体育の授業。走り幅跳びで声援を受ける七海カナタは、いつもの無表情のまま砂場に飛び込んだ。
「七海さん頑張って!」
彼女は女子にしては身長が高い上、顔が小さいので、遠目だとモデルみたいだ。こういった女子の他の女子からの扱いは、嫉妬されるか、人気者に持ち上げられるか、だが、彼女の場合は幸い後者みたいだ。男子だけでなく、女子からも黄色い声援が上がる。
しかも、彼女が跳んだ距離はクラスで一番だったらしい。彼女が悪魔と戦っていることを知っている身としては納得の結果だけれど、傍から見れば驚きだろう。黄色い声援は更に大きくなっていた。挙句の果ては、体育教師兼、陸上部顧問の篠田と、陸上部員が熱心に彼女を口説いていた。
「はぁ、本当……いいよな、七海さん」
「マジで作り物みてぇ……」
俺は周囲に座る男子の言葉に頷く。
「うん、綺麗だ」
その点について異論はない。それ以外――特に「凛としている」や「お嬢さま然としている」「クールビューティー」などといった性格的な評には異議を唱えたいけれど。
「お、アキラもそう思うか?」
「傷一つない……」
独り言で呟いたつもりが、隣の男子もウンウン頷いている。
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